1971年の「公立の義務教育学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(略称:給特法)」の成立によって、教職員は職務と勤務が特殊であるとして、以下のような「特例」が定められました。
この法によれば、公立学校教職員に対しては、1日7時間45分の所定勤務時間を超えての勤務は「超勤4項目」以外は命じられないはずです。よく勘違いされますが、教職調整額(*2)は時間外勤務手当ではありません。「職務と勤務の特殊性(*3)」に対する手当です。2.にある通り、教員には時間外勤務が命じられないのですから、授業準備、テスト問題の作成・採点、クラブ活動の指導、 家庭訪問など、勤務時間をはみ出した業務があった場合は、 「勤務時間の割振り」 によって対応すべきなのです。
ところが文科省は、「1年単位の変形労働時間制」の導入により、学期中の所定勤務時間を週3〜4日、1〜2時間ずつ延長することができるとしています。これにより、「超勤4項目」でなくとも1日7時間45分を超えて勤務させることになり、「もともと命じることのできない時間外勤務」を、命じなくても勤務時間を延長させることができるようになってしまいます。これは現行の給特法の考え方とも矛盾していることになります。
1966年に当時の文部省が教員の勤務実態調査を行った結果、1週間当たりの平均超過勤務時間が小学校で1時間20分、中学校で2時間30分であったことに由来しています。この過勤務時間は、今や1日で超えてしまっている教職員がほとんどではないでしょうか。2018年9月27日に公表された『教員勤務実態調査(平成28年度)の分析結果及び確定値の公表について』によると、1ヶ月平均の残業時間は『昭和41年では約8時間』だったものが『平成18年では約35時間』の約4倍に増えています。中学校では実に6割近くが、1月の超過勤務が過労死ラインと言われる、80時間を超えていました。給特法を改正するなら、ここにこそメスを入れるべきです。
教職調整額 は、教師全員に一律に, 残業してもしなくても支払われる点で特異な制度と言えますが、残業の時間数の上限が定められていないため、実態としては「働かせ放題」になるという重大な欠陥があります。現在、一般の公務員と同様に、時間外勤務の時間数に応じて時間外勤務手当を支給することを求める動きがあります。これには、「これまでの教員の自発性・創造性を尊重する考え方をなくしてよいのか」「教員の職務が時間外勤務命令に基づく勤務になじむか」「予算の確保ができるか」などの課題がありますが、もし教職調整額4%をなくしてすべて残業代の支給に変えた場合、月平均の時間外勤務は約60時間で月給が40万円の場合の残業代は175,000円との計算があります。
すべての教員に残業代を支給するために必要な予算は約1兆円といわれています。現在、教員は約1兆円分の労働をただ働きしているとも言えます。今回の「1年単位の変形労働時間制」の導入は、このただ働き分を見えなくしていくためのものとも言えます。
給特法成立時には、次のように説明されました。以下のことから実際の労働時間とは関係なく一律支給の給与がふさわしいとされました。
給特法成立時には、次のように説明されました。