今年度、岐阜県「教職員の働き方改革プラン2019」は、長時間勤務・多忙化解消を推進するとしています。「1年単位の変形労働時間制」が導入されると、平日の超過勤務の一部を勤務時間内の所定労働時間とすることになります。すると、長時間過密労働の実態とそれを強いる業務はそのままに、時間外勤務が減ったように見せかけることになってしまいます。
現在の「働き方改革」は、「早く帰れ」=「勤務時間を短くすること」にあまりにも重心が置かれていないでしょうか。その結果、多くの学校現場で勤務時間(在校等時間)を短く虚偽報告する事例が多発しています。だから「1年単位の変形労働時間制」は、勤務時間について「ウソをつかないこと」に少しはなるかもしれません。でも、それだけです。
文科省調査でも厚労省調査でも、教職員の平日の労働時間の平均は1日11時間を超えています。1日あたり3~4時間の残業をしていることになります。また、小学校で3割以上、中学校で6割以上の教職員が過労死ラインを大きく超えて働いています。「1年単位の変形労働時間制」は、この実態を覆い隠すことになります。
また、制度が導入されれば、育児・介護など家庭的責任を負っている先生は、「繁忙期」に夕方5時頃に帰宅するためにいちいち年休を取らなくてはならなくなります。まだ勤務中の同僚に気兼ねして帰宅しづらくなり、仕事と家庭の両立が一層困難になる方が増えることが予想されます。割り切って早く帰宅するにしても、同僚から理解されなければ職場での共同性をもこわしかねない状況が生じます。
岐阜県「働き方改革プラン2019」は、勤務時間管理の徹底だけでなく、業務内容の見直しも求めています。長時間過密労働を根本的に解消するためには、一人あたりの業務量を縮減することが不可欠です。そのためには、個々の教員の努力に頼るだけでは限界があり、①教職員定数を抜本的に改善すること、②持ち授業時間数の上限を設定すること、が必要です。学校の「ブラック」ぶりが社会でも認知されるようになり、これらへの理解も広がっています。
「1年単位の変形労働時間制」の導入は、「働き方改革プラン2019」に水を差し、教職員の業務負担の軽減や定数増(せんせいふやそう)の要求を後退させてしまいます。そして、長時間過密労働の解消から遠ざかることになります。