ほんりゅう 2024年10月20日(奥村)

以前担任した生徒で読書好きの子がいた。あるとき彼女が読んでいる本について何気なく尋ねた。知念実希人のミステリー小説『硝子の塔の殺人』だった。話題の作家で図書館にあったのもあり読んでみた。そのことを彼女に話し、感想を話し合った。たった1~2分のことだった。しかし彼女は卒業するときに「先生が私のおすすめの本を読んでくれて、うれしかった」と手紙を書いて渡してくれた▼人は、自分の好きなことや好きなもの・関心のあるものを分かってくれて、実際に読んだり見たり体験してくれることに喜びを感じる。体験までできなくても、相手の興味のあることについて「へ~、どんなところが面白いの?」などと質問してくれるだけでもうれしい。そうしてくれる人のことを信頼し親しみを感じる。しかしそうしてくれる人は少ない。人は実は他人のことにはそれほど興味はなく、ましておすすめを体験してくれることなどほとんどないだろう。だからそういう人は貴重で、好かれる▼私はギターを弾いて歌うことが好きだが、好んで聞いてくれる人は少ない。家で歌うと家族から煙たがられる。最近は専らひとりで部屋にこもって、聞いてもらいたいなあと思いながら歌っている。

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