ほんりゅう 2020年6月20日(岡山)

「チボー家の人々」を読み終えた。筆者は、第一次世界大戦時に生きた人々が戦争を通して考え方や生き方が変容していく様子を19年をかけて仕上げた。書き終えたのは、第二次世界大戦直前である。再び戦争に向かう危機感を抱いて執筆する思いはいかばかりだったろう▼戦争に向かう国々の政府には領土拡大の思惑があり、他の国々の動向を見ながら「戦争に向かう」のをやめようとはしない。国民は「外国からの脅威から国家を守らねばならない」と信じ込まされた。戦争に反対する者は検挙されたため、国民の大多数は「もはや戦争反対を誇示するのは誤り」という考えに変わっていく。国際的な反戦組織のインターナショナルも戦争を容認するようになっていった。マスコミは、最後まで勝利を信じるよう呼びかけ続けた▼今の日本はどうか。安倍政権は「自衛のために憲法9条を改憲しようと躍起になっている。米国との強固な軍事同盟、集団的自衛権の行使容認、国家機密保護法制定、マスコミへの圧力…。百年前と似た状況である▼しかし今は、騙されない多くの人たちがいる。検察庁法改正案をやめさせた力。「桜を見る会」で控訴する弁護士たち。政権の言いなりにならない人びと。戦争には向かわない。