「忙しくなっている」「教員を続けるのがしんどい」という声が多く届けられるようになり、実態をつかむ必要があると考え、私たちは2003年度より「勤務実態調査」をおこなってきました。
私たちは、すべての子どもが大切にされ、個性ゆたかに成長していくことを願い、教職員一人ひとりが子どもたちに寄り添い向き合うとともに、生き生きとやりがいをもって働ける働き方にすることが大切であると考えています。
当局による「働き方改革」もすすめられていますが、根本的な長時間勤務の改善にはいたっていません。さらに改善がすすむよう、これまでのデータをもとに、教職員の働き方の実態をお知らせします。
調査は土日も含めた1週間、部活動の時間も含めて調査しています。調査用紙は約1万枚を配布しています。非正規職員(常勤・非常勤)も回答しています。
2017年度からは、時間外勤務時間を計算する余裕もないという声に応え、同時に、より正確に勤務時間を把握する目的で、出退勤時刻を回答する方式に改めました。
過労死ラインをはるかに超える長時間勤務が明らかに
2003年度の調査当時から、時間外勤務は平均して週10時間、月換算40時間を超え、次第に増大してきたことが分かります。持ち帰り仕事が減っていることもわかります。ここ数年来、情報管理が厳しくなり仕事を持ち帰れなくなり、学校に残って仕事するようになったと考えられます。家に帰ってやっていた仕事を学校でやるようになり、長時間勤務がより見えやすくなったともいえます。
校種別にみると、特に中学校での長時間勤務が顕著に表れています。部活動指導の負担が大きく、部活動指導のあとに授業準備や会議・打ち合わせが行われることが多くあるのが実態です。
他の校種も例外ではなく、小学校や特別支援学校では、持ち時間数が多く空き時間がほとんどなく、授業準備や会議・打ち合わせがどうしても勤務時間外になってしまいます。また小学校では地域の資源回収、祭りなどへの参加などを求められることも多いです。
時間外勤務が過労死ライン月80時間に相当する週20時間を超えている教員の比率が次第にあがっています。
校種別に見ると、中学校、次いで小学校で過労死ラインを超えるような働き方をしている教員がさらに増大していることが明らかになっています。
「勤務実態調査」をおこなうことで、多くの教職員が長時間勤務となっており、過労死ラインにまで達している実態をあぶりだしてきました。同時に、教職員自身が「長時間勤務なのは当たり前・仕方ない」という意識を変え、自分自身の勤務時間を意識していくきっかけになったと考えています。
2019年度調査「勤務時間把握が正確におこなわれていない」
私たちの調査では、約20%の教員が勤務時間を正確に申告していないという結果が出ています。
その理由には、少なくない教員が「正確な勤務時間を申告しても何も変わらない」と考えていること、「長時間勤務の実態が知られると管理職から叱責される、それを避けたい」ということなどがあります。また、管理職による時短ハラスメントもあり、教員は「早く帰れ」「少なく勤務時間を申告せよ」という暗黙の圧力をうけています。長時間勤務縮減に積極的になれない管理職がまだまだいます。「児童・生徒のために教員は私生活も犠牲にして働くべきだ、長時間はたらく教員ほど良い教員だ」と考えていることも問題です。
「一年単位の変形労働制」では長時間勤務は解消しません
昨年12月に給特法が改正され、自治体の判断で「1年単位の変形労働時間制」を導入することが可能となりました。私たちは、さまざまな問題点を抱える「1年単位の変形労働時間制」を岐阜県が導入するための条例を制定すべきではないと訴えます。
国会では夏休みのまとめ取りが目的のように答弁されましたが、夏休みに休める保証はありません。長時間勤務を解消するのではなく、むしろ見えにくくさせてしまう、さらには増長させてしまう危険があります。
今すべきことは、教職員の長時間勤務を解消することであり、業務削減を進めることです。文科省や各教育委員会が取り組むべきことは、時間外勤務の月45時間、年360時間の上限ガイドラインが守られる道筋を責任をもってつけることとです。
長時間勤務の抜本的解決のためには「先生を増やす」=教職員の定数増が必要で す。国も県も財政措置を含めて尽力することを強く求めます。