【談話】「研修校」「実習校」制度の廃止を求めます
2020年1月15日
岐阜県教職員組合
書記長 長澤 誠
私たち岐阜県教職員組合は、すべての子どもが大切にされ、個性ゆたかに成長していくことを願っています。そのためには、教職員一人ひとりが子どもたちに寄り添い向き合うとともに、生き生きとやりがいをもって働けることが大切であると考えています。
昨年7月に、岐阜市で「中3いじめ・転落死」という痛ましい事案が起きました。私たちは教育に携わる者として、胸が締め付けられる悲しみとともに責任を痛感しています。このような事案がなぜ起こってしまったのか、今後起きないようにするためにはどうしたらよいのか、原因を突きとめ、対策を講じる必要があると考えます。
私たちは、12月の第三者委員会の「報告」に先だち、今回の事案を、関係した教員個人の責任のみに帰結させるのではなく、背景にある教育現場の状況を究明し、根本的な解決をはかる必要性を指摘してきました。そして、教育現場の多忙・長時間勤務をなくすこと、管理職に対して報告がしづらい雰囲気をなくすことを訴えました。
さらに、今回の事案が発生した学校が「研修校・実習校」であったことから、「研修校」「実習校」制度の改善、各学校の研修のあり方の改善を私たちは訴えました。
「研修校」は、県下各地域の中心校と位置づけられ、研究・発表会を定期的におこなっている学校です。現在どの学校の教員も、多くの業務を抱え、長時間勤務の状況にあります。加えて新たな教科や学習内容の増加による負担が増しています。子どもへの丁寧な対応が求められながら、教員は子どもたちと十分に向き合える時間を確保しづらいのが現状です。「研修校」では、加えて研究・発表をおこなうことになります。
「実習校」は、「研修校」のさらに中心に位置づけられている学校で、岐阜市立では小中9校が指定され、他の「研修校」以上の多くの研究・発表をおこなう上に、岐阜大学教育学部の教育実習生の指導をおこなっています。そのため、教員は年間を通して深刻な長時間勤務の状態に置かれています。教員が子どもたちの声や異変に気を配れず、「いじめ」に関する情報を共有できなかった原因の一つに、このような勤務実態があったと私たちは考えます。
私たちは何よりも、教職員の多忙・長時間勤務を早急に解消することが必要だと考えます。第三者委員会の報告も、「教員の多忙化が個々の生徒を見る余裕をなくしていることを念頭におき、教員の多忙の解消に積極的に取り組んでいかなければならない」と指摘しています。この指摘を受け止めるならば、研究・発表や教育実習生の指導がともすれば優先され、子どもの声や異変に十分に気を配る余裕を失くしてしまう「実習校」の制度は、廃止すべきだと考えます。
岐阜市の総合教育会議では、柴橋市長も実習校の廃止・見直しを検討するよう市教育委員会に要請しました。しかし、教育委員会関係者の中には「実習校が果たす役割が大きい」ことを理由に、「実習校の廃止やあり方の検討」に難色を示す方もおり、大きな失望を感じます。
私たちは、今回の事案の重大さを受け止め、教職員の多忙・長時間勤務の解消が早急に求められていることも踏まえ、「研修校」「実習校」制度の廃止を求めます。
以上