週間激務・組合連2017年勤務実態調査の結果

時間外勤務が急増

 岐阜県教委は「教職員の働き方改革プラン2017」(以後「改革プラン」)を発表した。その中で、組合が長年要求してきた「出校時刻を含む勤務時間把握」を開始するとした。組合連の「勤務実態調査」も、勤務時間前・後の勤務時間を記録する調査から、「出勤時刻・退勤時刻」を記録する調査へと変更した。その結果、「時間外勤務」が急増した(グラフA)。 

「早く帰れ」と言われても

 多くの学校で、「8の日」や「水曜日」を「早く帰る日」にするなどの指導が強くおこなわれるようになった。2014年度から2016年度にかけて「時間外勤務」が微減してきた大きな理由が、この指導のによるものと考えられる。

 しかし、学校現場からは「まだ仕事ががあるのに、とにかく帰れと言われる」との声がたくさん寄せられていた。「残った仕事は朝早く来るか、土日に来るしかない」という声も多く聞かれた。

 グラフBによると、朝はやはり8時頃までに出勤する職員が多いが、特に7時前に出勤する人数も目立つ。帰りは17時から22時頃までに幅広く分散し、ほとんどの職員が定時を過ぎてから際限なく残業をしていることが分かる。ただし、23時前後の退勤については、定時制や寄宿舎指導員も調査に含まれていることを追記しておく。しかしどちらにしても朝早く出勤し、夜遅くまで帰れない状況がわかり、今回の調査結果はこれを実証したことになる。 

過労死ライン超えも急増

  時間外勤務の急増にともない、「過労死ライン(1週20時間超え)」が45%から63%に急増した。健康破壊ライン超えを合わせると87%以上となった。このままでは、ますます健康を害したり、心身を害したりする教職員が増えることに変わりない。


時間外勤務の何を減らすか

 時間外勤務をどうすれば減らす事ができるだろうか。各学校で縮減のための検討がなされたりすることが多くなってきた(グラフC)。しかし、そもそも勤務時間が正確に記録されていなければ話にならない(グラフD)。

 具体的になにを検討したかは「『ノー残業デー』の徹底」、「会議時間の短縮」「管理職の働きかけ」などが多く見られる(グラフE)。しかし、前述のように仕事量自体が減るわけではないので、「ノー残業デー」を徹底してもどこかでしわ寄せが来るなど、根本的な解決にはならないのが実態だ。

時間外の業務内容からみえてくるもの

 表Fでは時間外勤務の内容を分析している。

 第一位は「教材研究、ノート点検、採点・成績処理など」である。教職員であれば、「授業に関わることからは手を抜きたくない」と考えるのは当然だと思う。しかし、「手を抜く」のではなく「時間を省く」という発想は必要だと思われる。県教委の「改革プラン」にも、「教材研究の負担の軽減」とある。

 第二位「校務分掌・学校行事等の準備・実施」については、「改革プラン」にもあるとおり、「校務の標準化」「校務支援システムの導入」「学校行事の精選」が必要である。各学校の管理職によるマネジメントがより求められる。ただし、教職員の意見を十分に聞き、子どもたちや地域にも配慮した上ですすめていく事が望まれる。

 第三位「研究指定・学校訪問等の準備・実施」については、「改革プラン」にもあるとおり、「事前準備の簡素化」「指定校の縮減」「研究内容の精選」が必要である。一時期、事前準備や配布物などが際限なく増えていく傾向が見られた。見栄えを良くする事が目的とならないよう、必要のない準備をしない、準備をやり過ぎないことが必要である。教育委員会による明確な指示や管理職によるマネジメントが必要である。

 第四位「学級通信、週案作成、教室整備」では、特に「週案」が問題となっている。個人情報を週案に記入することは問題が大きい。週案は法的根拠もなく、作る必要がそもそもないという論議もあるが、計画はともかく、反省を記入する欄はなくすか簡素化すべきではないか。個人情報に関わるものはデジタル化(または紙ベース)して、金庫保管になっているはずである。

 今回の集計では、小・中・高・特支学校をまとめたため、「部活動」が第五位となっているが、中・高に限定すればこの順位はもっと上位に来るだろう。名古屋大学大学院准教授の内田良先生の新著『ブラック部活動』にもあるとおり、生徒や保護者の期待から、長時間や休みのない活動になりがちである。県教委や各学校が定めたルールを厳格に守る事と、引率できる外部指導員の導入などをしなければブレーキがかからないと思われる。

 第六位「職員会、学年会等の諸会議」については、各学校で、会議回数の削減、会議資料の簡素化、会議時間の短縮のとりくみがなされている。しかし、「会議は勤務時間中に終了する」という原則が忘れ去られている。「会議が勤務時間を超えるのに、管理職からは『延長して申し訳ない』の一言もない」との声が多く寄せられている。

教員の善意に任せたグレーゾーン勤務を放置するな

 最後に、教員には4%の「教員調整額」があることや、「子どもたちのためなら、どこまでも頑張れる」という考えから、時間外勤務についてどんどんと「グレーゾーン」が増えて来た。部活動指導については、業務として命令されているのかどうかが未だに決着していない。業務命令で土日に引率しているのであれば、代休措置が必要になる。よって、代休措置が必要ない平日に部活動の試合を組んでいる県もある。

 他にも、勤務時間前に業務として命じられる管理当番、交通指導、あいさつ運動は代替が補償されていないし、小・中の給食指導も休憩時間を奪っているのに代替の補償がない。「勤務時間を守れ」という主張は、学校現場での「グレーゾーン」をなくしていくことにつながっていくのではないだろうか。